Saturday, February 23, 2008

ボストンで生む人のための出産ガイド 1 (はじめに アメリカの医療保険)

これらの情報は、8人の方が快く提供してくださいました。どうもありがとうございます。(世話人より)

はじめに
みなさまのあたたかいお力添えのおかげで、第二子となったちびも、はや6ヶ月となりました。当地での妊娠出産は、第一子の出産(日本の総合周産期母子医療センターをもつ大学病院)と比べ、異なる点も多く、興味深く思いました。妊娠・出産は本人および家族にとって大きなイベントであり、本人やパートナーの仕事/研究への影響も甚大です。HMJ (Harvard Med-J)の過去ログ『ボストンで生む人のための出産ガイド』(以下「ボストンで生む人のための出産ガイド96年版」と呼ばせていただきます)や『ボストンへようこそ』(改訂第二版、ボストン日本人会婦人部編)は大変参考になりましたが、どちらも約10年がたっています。最近の出産をめぐる情報をアップデートし共有しようと、2004年−2005年現在の状況をまとめてみようと思い立ちました。そこで知り合いの方に声をかけて情報交換会をいたしました。参加者は7名で、ボストンという土地柄を反映して日米出産経験者4名、助産師2名、公衆衛生学専門家1名、医師1名という構成となりました。会では、具体的なハウツーから、日米の医療の違いまで多岐にわたる発言が寄せられました。

本稿は、この情報交換会をもとにBrigham and Women’s Hospital(以下BWH)で出産した筆者の経験や知人からの情報を加えたものです。HMJの『ボストンで生む人のための出産ガイド96年版』に追加することを前提とし、重複をなるべく避けました。一個人の経験をもとに、可能な限り具体的に記載したため、偏りのある情報も少なくないと思いますがどうぞご容赦ください。

最後になりましたが、惜しみない協力をしてくださった小山内泰代さん、小野崎恵理子さん、小野崎耕平さん、加来るみ子さん、中澤千冬さん、Sさん、本当にどうもありがとうございました。お忙しい皆様の御協力と御親切に心よりお礼を申し上げるとともに、当地での安心な出産の一助となれば幸いです。                  
2005年10月 東京にて、蜂矢百合子


1. アメリカの医療保険
(ハーバードで医療システム、医療専攻を専攻している方から概略を教えていただきました。)
アメリカの医療保険制度は日本と大きく異なります。代表的な違いは次のとおりです。
・国民皆保険ではない。老人や低所得者などを除き、多くは各自で民間保険に加入するか、雇用者が提供する職域保険に加入している。無保険者も国民の2割弱存在する。
・どこの病院にでもかかることができるオープンアクセス(日本で言ういわゆるフリーアクセス)ではなく、保険プランによってプロバイダー(アメリカで良く使う言葉で、病院や医師を指す)が決められていることが多い。
・医療費の単価が全国一律の日本と異なり、保険プランや病院ごとに違う。例えば同じ検査でも5000円の病院と17000円の病院があったりするし、また同じ病院でも患者が加入している保険会社によって請求額が異なる。

日米を一概に比較することはできませんが、多くの方の印象をまとめると「似たような診療行為でくらべると、米国の医療費の方が概ね高額」ということになろうかと思います。一口で言えば、極めて複雑なシステムであり、保険に関しても「ケース・バイ・ケース」ということになります。医療保険の加入時や、手続きの際には、面倒でも充分に確認することが必要になります。特に、妊娠出産がカバーされるかどうかは大切なところです。保険プランによっては、加入時に妊娠の可能性がある、あるいは判明している場合には、出産費用はカバーしないところもあります。この場合、自己負担額は250万円から300万円程度にのぼる可能性もありますので、充分に注意が必要です。また、過去には日本人の保険未加入者の方で、病院の貧困者向けのチャリティーケア(慈善医療)制度により自己負担ほとんど無しで出産したという方も複数いらっしゃいますが、今後も適用になるかどうかは全くわかりません。

ハーバード関連病院勤務の方の場合ではHarvard Pilgrim Health Careなどの保険が一般的のようです。また、ハーバード大学の学生の場合はBlue Cross and Blue Shield of Massachusetts (以下BC/BS)のHarvard University Health Services (以下HUHS) PPO(Prefered Provider Organization)への加入が義務付けられているようです。また、特にラボに勤務されている方の場合、大学に所属しているのか、ラボに個人的に雇われているのか等、所属先やポジションにより、その扱いは大きく異なります。雇用契約を結ぶ際に、医療保険については充分に確認しておくことが大切です。

いずれにしても、出産予定者がまず確認すべきことは、「妊娠出産がカバーされるかどうか」です。
1) 加入時に妊娠が判明している場合に、出産費用がカバーされるか
2) 加入後に判明した場合は、どの範囲がカバーされるか?分娩のみ?検診・検査は?

加入時に妊娠が判っており通常分娩がカバーされない場合でも、帝王切開に限ってはカバーするという保険プランもあります。ちなみに、ハーバード大学の学生およびそのご家族が加入する保険の場合は、加入時に判明していてもカバーされる上、出産関連の費用はほぼ全てカバーされます。(2005年8月現在)

また、保険プランとの手続き関係では、様々なトラブルが日常的にあります。代表的なものは、誤請求です。身に覚えの無い医療費が請求されていたり、保険でカバーされるべき医療費について自己負担を求めてくるような間違いが頻繁にありますので、その都度確認しておく必要があります。おかしいと思ったら、躊躇せず問い合わせることをお勧めします。

HUHSは、内科診療所はロングウッドにもありますが、産科小児科放射線科等の診療所はケンブリッジにあるホリヨークセンターまでいかなくてはいけません。

学生、常勤ではない方(non group)対象の医療保険もあり、たとえばBC/BSでは Basic Blue Directなどです。保険料は自己負担割合や保証限度額、PPOかHMOかなどで大きく変わりますが、たとえば学生で配偶者と子供一人だと月に635ドル、研究者で福利厚生(benefit)がない場合(雇用主が保険料を負担してくれない場合)で週30-100ドル、個人加入(non-group)家族3人で月800ドルなどです。

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