Thursday, March 20, 2008

在米日本人ポスドクのための就職情報

今回は、人材紹介会社の方に「在米日本人ポスドクのための就職情報」について話していただきました。「ポスドク1万人計画」などのポストドクターの現状と、「それに対してどう対応して、企業で職を得るか」、という話題でした。「ポスドクの現状」についての話は、インターネットですぐ検索できますので、キャリアパスについての話を報告します。

簡単に言えば、ポストドクターの資質・能力だけではポストにつけないということです。 企業は資質・能力は当たり前のものとしてみなし、むしろそれ以外のものを持っているかどうかを求めてきます。
考えてみれば当たり前のことですが、普通大卒は22歳で会社に入ってきます。それに対して、ポスドクは27歳まで大学院にいて博士号を取得し、更に数年間研究室を変えて修行をするわけです。結果30-35歳ぐらいで就職するわけですから、22歳の人と同様に扱われるはずがありません。むしろグループリーダーとして皆を率いるような立場であるわけです。
そのあたりの「企業が何をポスドクに求めているか」という考えがすっかり抜けたまま就職活動をすれば、大変なことになります。

人材紹介会社の方によると、以下のことが必要だそうです。
1.自分の強みを知り、それに焦点をあわせる。
弱みは直そうとしないこと、直そうとすると自分の強みが弱くなりがち。弱みを直すのは強みを発揮できるようになってから。 
2.リーダーシップの発揮
リーダーとは階層的なボスではなく、仕事であり、責任であることを理解する。
3.コミュニケーション
リーダーシップの発揮の基礎は人とのコミュニケーション。いかに人との関係をスムーズにするかを常に考える。
4.人脈を広げる
在米研究者は地の利を生かして、積極的に色々な人とフィールドを問わず人脈をつくることが大事。(日本人に限らず、現地の人、あるいは外国人と)
5.業務志向能力
成果、貢献と時間を考え自分の行いを常にフィードバックし、明日のために今日何ができるか考える。
6. Financial Literacy (ファイナンシャルリテラシー)
企業は営業キャッシュフローで判断する。少なくとも決算書を読み取る力をつける。
7. 常に市場に目を向ける
成果、貢献は内部でなく外部で評価される。
8. 英語力の一層の向上
在米研究者の企業面接は英語で行うところが出てきた。

いろいろ話していただきましたが、特に印象深かったのは、コミュニケーションの手段のところで「常に笑顔でいること」ということです。笑顔は、毎日鏡を見て自然な笑顔ができるようになるまで練習をするぐらい必要だそうです。これを含め、コミュニケーションについておっしゃっていたことは、Science Career MagazineのCareer basics Bookletの、Chapter Fourの後半にある、Insider's toolにも書いてありました。
(笑顔については、「自分の好きな仕事・プロジェクトをやるにつきます。そうすれば、自然に笑顔になる」というコメントもありました。)

これらの能力は、簡単に身につくわけではありません。例えば35歳は人生の転機であり、また年齢制限のあるの職が多い年齢ですが、この年齢でポジションを取る場合は、32-33歳ぐらいから企業が必要としている能力を身につける努力を始めたほうが良いとのことです。

これらの能力は、実は企業に就職するだけではなく、アカデミックで生き残っていくための重要な要素でもあると思います。

グループリーダーと聞くととても大変そうに聞こえますが、世話人の個人的意見では、企業が要求しているようなグループリーダーとしての素質の一部は、研究室でポスドクをやっているうちに少しずつ培われていくものだと思います。

例えば、
1. 部下(後輩や学生)の面倒を見る。
2. 上司といろいろ相談したり、交渉したりする。
3. 自分のプロジェクトを動かす。(上司の細かい指導がなくてもやれるという意味)
4. 隣のラボの学生と小さいコラボレーションをする。例えば相手の実験の手伝いをして、自分の実験を手伝ってもらう。
5. 学会に行って知り合い作る。 その人とコラボレーションをする。
などだと思います。 

推薦本:リーダーシップ
7つの習慣(First things First) スティーブン・コビー
人を動かす D.カーネギー
決算書の暗号を解け 勝間和代

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